工業力学【剛体(円柱)の滑り運動(並進運動)&ころがり運動(回転運動)】
1.問題
剛体の滑り運動&ころがり運動の問題
角度αの斜面に置いた半径R[m]、質量m[kg]の円柱が
①斜面をころがらずに滑った場合と
②滑らずに転がった場合の
[t]秒後に移動した距離x[m]を求めよ。
初期速度は0[m/s]とする。
①斜面をころがらずに滑った場合
まず運動方程式を立てます。
高校物理でやる【質量×加速度=合力】です。
質量:m
加速度:
合力:F
なので
(1)となります。
重力による力mgは斜面方向成分のみを考えるため
(2)となります。
(1)の式に(2)式を代入すると
(3)となります。
式(3)の両辺をmで割ると
(4)となります。
この式より斜面を滑る物体は質量に依存しないことがわかります。
(4)式の両辺をdtで積分すると
(5)となります。
は速度です。 ()
初期条件t=0の時v=0であるため
となり、
(6)となります。
(6)の両辺を再度dtで積分すると
となり、
初期条件t=0の時x=0であるため
となり、
(7)となります。
(7)の式より、t秒後にどれだけ滑ったか(x)が求められます。
②滑らずにころがった場合
同様に運動方程式を立てますが今回はころがり運動をするため、摩擦力Fが進行方向と逆方向にかかります。
上の図の様にころがった角度をθと置くと運動方程式は以下になります。
(8)
【質量×加速度=合力】
(9)
回転にかかる運動方程式は
【慣性モーメント×角加速度=合力×回転中心からの距離(トルク)】となります。
慣性モーメントって何?って思うかと思いますが、慣性モーメントは別の機会にご説明します。
「質量が物体の動かし難さ」と考えれば慣性モーメントは「物体の回転し難さ」です。
質量が大きければ大きいほど動かすのに力が必要ですが、
慣性モーメントも同様に大きければ大きいほど回転させるのに力(合力×回転中心からの距離:トルク)が必要になります。
円柱が円周方向に回転する場合の慣性モーメントは
となります。
回転量θと進んだ距離xとの関係を考えてみる。
まず円周を求める式はご存じですよね?
そう、2πrですよね。
円柱を1周転がしたとき進む距離は何になるでしょうか?
そう、2πrです!
πとは180°という意味ですので、この式の2πとは360°ということだったんですね。
つまり何が言いたいかというと、
ころがった角度に半径をかけてあげると、転がった距離が導けるのです!
つまり (10)となります。
(11)に変形できます。
のθに(11)の式を代入すると(問題文では半径がRなためr=Rを代入)
(12)となるため
(9)式に(12)を代入すると
(13)となる。
(13)式に を代入すると
となり、きれいに半径Rが消え、
(14)となります。
この式より転がり運動は半径に依存しないことがわかります。
(14)式のFを(8)式に代入すると
変形すると、
(15)となりmが両辺からなくなり、
この式より質量にも依存しないことがわかります。
(15)式の両辺をdtで積分すると
初期条件t=0の時v=0であるため
(16)となる。
(16)式の両辺を再度dtで積分すると
となり、
初期条件t=0の時x=0であるため
(17)となる。
(17)の式より、t秒後にどれだけ転がったか(x)が求められます。
2.滑り運動(並進運動)&ころがり運動(回転運動)の式を比べてみる。
(7)
(17)
ころがり運動は滑り運動に比べて同じ時間に進む距離が()になることがわかります。
3.目で確認
最後に一番上に物理演算させた動画を載せていますので、物体がどう動くのか目で確認してください。
工業力学のまとめは以下をご覧ください。